2014年12月22日月曜日
稲垣大
自己紹介:
大阪の阿倍野という下町の商店街で、“鍛金”という仕事をしています、稲垣です。
“鍛金”とは金属の板や棒を金槌や木槌で叩いて、伸ばしたり縮めたりしながら、成型する技法です。6000年程前に現在の東欧、中東のあたりで発祥し、弥 生時代にシルクロードから伝わり、以来日本で独自の発展を遂げてきたようです。それは大きな歴史の話、少しロマンも感じる6000年も前からですが、いき なり現代へ、今からほんのすこしの昔の話…。
まだモノあまりがなくて貧しかった頃、日本には「しつらえ」という言葉がありました。勿論、いまでもある事なのですが、昔ほど世間で耳にしなくなったようにも思います。
「しつらえ」られた着物、草履、洋服、ワンピース…、それらは一点もの、一生もので、高価だけど重宝し、大切に使おうという意識が自然と芽生え、綻べばなおすという気持ちがあたりまえのようでした。
いまふと思い浮かんだそれらは、身に纏うモノたちです。
素材の持つ質感が、家や生活空間から少しずつ失われていったと感じた25年程前に鍛金と出会い、何とかつくり続けている中で「家×クラフト」のメンバーと の出会いがありました。それは、感じていても、ひとりではなかなか辿り着けそうになかった道筋が、見え始めた瞬間でもありました…。
写真は鍛金の道具、当金と片手鍋です。道具に規格品はありませんので、モノを造る前に、道具事体を造ります。
「家×クラフト」展の提案するモノたちが、一点ものでもなく、大量生産でもありません。
それらは、時に「部屋」を纏うようなモノや、少し高価だけど現代の「しつらえ」の意識に寄り添う気持ちの中と、その周辺の質感あるモノたち。
そんな意識や気持ちを共有しながら、たとえゆるやかでも、ちょうど心地よい距離感や速度で、少しずつ歩んでいければなと、思っています。
出展品は、真鍮や銅の照明傘、金具、石鹸置き、片手鍋や調理用具、珈琲ドリッパーなど。
本当に寒くなってまいりましたが、ご覧いただければ幸いです。
是非、目一杯あたたかくして、お越し下さいませ!
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